【介護の質の向上】介護の質に影響を与える要素について解説します【全部で4個】

介護記録

この記事はこんな悩み・疑問にお答えします

わたしの職場では、「個別ケアが大切だ」「個別ケアの質をあげろ」「ケアの質をあげろ」って言われるけど、そもそも介護の質ってなに?
利用者さんによって受け取り方は違うと思うし。
それに、介護の質を高めるにはどうすればいいんだろう?

この記事を書いた私の実績・経歴です

  • 福祉系の大学院卒で介護の実務は13年以上。
  • 介護記録の書き方・活かし方にフォーカスした、コンサルティング・サービスを提供中。
  • 介護記録の論文執筆・学会発表の経歴あり(日本国内ではじめて、介護現場の職員2800名規模の介護記録に関する郵送調査を実施)。

なにがケアの質に影響を与えてるの?

なにがケアの質に影響を与えてるの?

「個別ケアが大切だ」「個別ケアの質をあげろ」「ケアの質をあげろ」ということが、あなたの職場でも声高に叫ばれてると思います。

そう言われても、そもそも「介護の質」って目に見えないし、「介護の質」そのものがよくわからないって感じではないでしょうか。

このような疑問にお答えしていきます。

ケア(介護)の質ってなに?

結論から話します。

「介護の質ってなに?」って疑問です。

答えは、“介護の質=ケアプランの質”です。

介護に限った話ではありませんが、病気のある方・障害のある方・子ども・ひとり親の家庭などをサポートするときって、かならず計画書を作りますよね。

福祉・介護の業界で提供するサービス(サポート・支援・ケア)って、似てる事例はあっても、まったく同じことはないので、基本的にオーダーメイドです。

オーダーメイドだからこそ、計画書が必要です。

計画書がなければ、寝たきりなのに、急にヘルパーさんが毎日家に押しかけてきて、スーパーに連れ出されるようなことが、日常的に起こります。

なので、援助者は計画書に沿って支援します。

いいかれば、計画書に書かれてることが、利用者さんのニーズ(顕在的ニーズ:自分の言葉で説明できるニーズ)であり、ウォンツ(潜在的ニーズ:自分の言葉では説明できないニーズ、本人は自覚してないけど援助者が必要だと感じたニーズ)です。

だから、計画書に書かれていないことは、むしろ利用者さんからすれば、ありがた迷惑になる可能性があります。

追加でサービスをお願いしたり、やらないと命の危険に繋がりそうだと援助者の気づいたときは、本人や関係各所と相談して、計画書を見直して、サービスを追加しなきゃいけません。

福祉・介護の業界で提供するサービスは、ケアプランが土台になってます。

ケアプランがしょぼいと、利用者さんが必要とするサービスが提供されない危険があります。

逆に、てんこ盛りのケアプランであっても、お金も掛かるし、利用者さん自身が望まない可能性があります。

ケアの質は上下する

“質”って言葉をよくよく考えると、”質が高い・質が低い”って表現があるように、”質”は上がったり下がったりしますよね。

とはいえ、誰からみての”質が高い・質が低い”でしょうか?

この”質が高い・質が低い”って考え方の前提として、あくまで当事者(利用者さん本人)の視点を重視します。

利用者さん本人が主観的に感じる、”嬉しい・楽しい・安らぐ・落ち着く・ありがたい・助かる”といった感情面での満足度です。

「このサービスが欲しい」と利用者さんが言った場合に、利用者さんはサービスがほしいのではなく、サービスを使った先にある”嬉しい・楽しい”といった感情を満たす手段としてサービスを使います。

私たちは、スマホを使ってます。

でも、スマホが欲しいのではなく、スマホを得た先にある”繋がり・嬉しい・楽しみ・安心”などの感情が欲しいから、これらの感情を満たす手段として、スマホを使います。

なので、利用者さんに提供してるサービスの質の”高い・低い”を、援助者が評価・判断するのは、”やむを得ず”を除いて、あまり望ましい行為ではありません。

話が一瞬それますが、意思表示の難しい利用者さんの気持ちを、援助者が汲み取って、本人のかわりに代弁するアドボカシーは、利用者さん本人の意志を大切したうえで、”やむを得ず代弁してる”って考え方が前提にあります。

ということで、前置きが長くなりましたが、前段で”介護の質=ケアプラン”と説明しましたが、ケアプランの質も上がったり、下がったりします。

もちろん、ケアプランにおいても、”質が高い(良い)・質が低い(悪い)”を判断する主体は、利用者さん本人の視点を大切に考えます。

では、なぜケアプランの質は上がったり、下がったりするのでしょうか?

何かしらの要素・原因があるから、ケアプランの質が上がったり、下がったりするワケですよね。

ケアプランの質を上下させる要素・原因って何でしょう?

なにがケアの質に影響を与える?

“介護の質=ケアプランの質”を上下させる要素・原因とは、

  • 介護記録
  • 援助者の専門性
  • ケアマネジメント

この三つです。

それぞれの関係を図解すると、下図のようなイメージです。

援助の質に影響を与える要素

個々の要素・原因について、深掘りしていきます。

【要素①】介護記録

質問ですが、介護記録がまったくない環境で、利用者さんをケアできますか?

かなり難しいですよね。

では、なぜ難しいのでしょうか?

この答えは、

  • 利用者さんの状況や状態が、把握できない
  • 利用者さんの状況や状態が、ほかの援助者と共有できない
  • 利用者さんに提供してるケアが、モニタリングできない

こんな問題が起こるからです。

利用者さんのケアは、つねに特定の一人の援助者がマンツーマンで行うわけではありません。

基本的には、シフト勤務(交代勤務)のなかで、複数の援助者が利用者に関わります。

ケアプランに沿って提供したケアの内容や、利用者さんへ関わるなかで援助者が感じ取った異変・変化(気づき)などを、援助者間で共有しなきゃいけません。

なぜ、共有しなきゃいけないのでしょうか?

これらの情報を援助者間で共有しなければ、「利用者さんへの対応が援助者によって違う(援助の一貫性の欠如)」といったことや、「毎日取り組まなければいけないこと、毎日経過を見なければいけないことが漏れてしまう(援助の継続性の欠如)」といった問題が生じるからです。

なので、援助者は「口頭での申し送り」と「文字での申し送り」という、二つの方法で、援助に必要な情報を共有しています。

ただ、口頭での申し送りは、

  • 文字にしないと、情報がすぐ思い出せない
  • 申し送りをする現場に居ない援助者には、情報が伝わらない

こんな弱点があります。

一方、文字での申し送りは、

  • 介護記録に情報が残るため、すぐに思い出すことができる
  • その場に居ない援助者にも、情報を伝えることができる

口頭での申し送りの弱点がカバーできます。

つまり、介護記録が、援助者間の情報共有を支えるコミュニケーション・ツールとして機能しています。

ほかにも、ケアプランに沿って利用者さんをケアするなかで、援助者が得た気づきなどを丁寧に記録することで、それをモニタリングに活かすことができます。

いいかえると、介護記録がなければ、ケアプランを実行することは難しく、ケアプランの良し悪しが評価できません。

【要素②】援助者の専門性

利用者さんをケアするときに、ケアプランや介護記録を作成するのは援助者です。

介護の業界でもAIが導入・活用され始めていますが、AIの提案したケアプランを最終的にチェックするのは、援助者です。

介護記録に書くことも、援助者の実務経験・知識・技術の習熟度合によって違います。

ケアプランや介護記録を作成するときは、援助者の観察・推察・洞察・判断などの「専門性」というフィルターを通じて、援助者が利用者さんと関わるなかで必要・課題だと感じたものが、ケアプランや介護記録に書かれます。

ケアプランや介護記録の内容は、当然のことですが、援助者の能力に影響を受けるということです。

【要素③】ケアマネジメント

利用者さんをケアするときに、”介護記録”と”援助者の専門性”があっても、この二つと”ケアプラン”を繋ぎ合わせる仕掛けがなければ、どんなに素晴らしいケアプランを作っても、とんちんかんなケアが提供されかねません。

極端な例えですが、一流の設計士に”家の設計図(=ケアプラン)”を書いてもらっても、まったく建築のノウハウがない素人(=援助者の専門性)が、作業工程を管理(=介護記録)しないで家づくりをはじめたら、とんでもないことになりますよね。

だからこそ、”ケアプラン・介護記録・援助者の専門性”を繋ぎ合わせる仕掛けが必要です。

その仕掛けが、”ケアマネジメント”という考え方です。

ケアマネジメントは、ケアプランを土台に、”計画→実行・実践→評価・改善→再実行・再実践(PDCAサイクル)”を繰り返す仕組みです。

ケアマネジメントの仕組みを図解すると、下図のようなイメージです。

ケアマネジメント

“インテーク”から”ケアプランの評価・修正”という大きな流れのなかで、介護記録が作成され、すべてのタスクに”援助者の専門性”が絡んでいく感じです。

まとめ

この記事では、

「介護の質とはなにか?」
「なにが介護の質に影響を与えてる要素・原因なのか?」

この二つに焦点を当てて、解説しました。

振り返ると、

介護の質とは、ケアプランの質であり、ケアプランの質は、”介護記録・援助者の専門性・ケアマネジメント”の影響を受ける、ということです。

いいかえると、

“介護記録・援助者の専門性・ケアマネジメント”の質が、”ケアプランの質=介護の質”を決める、ということです。

“ケアプラン・介護記録・援助者の専門性・ケアマネジメント”は、すべてが単独・独立したものではなく、お互いに影響を与え合っています。

どんなに内容が素晴らしいケアプランでも、ケアプランの通りに援助者がケアをしなきゃ、ケアプランそのものが意味をなしません。

能力がどんなに優れた能力の援助者でも、ケアプランの内容が利用者のニーズを反映しない的外れなものなら、利用者の状態に適した援助が行えません。

ケアプラン・介護記録・援助者の専門性の質が素晴らしくても、これらを繋ぎ合わせるケアマネジメントの仕組みが破綻していたら、そもそも論として、ケアが機能しません。

“ケアプラン・介護記録・援助者の専門性・ケアマネジメント”のどれか一つを強化すればよいといった考え方ではなく、四つをバランスよく底上げしていくことが望まれます。


以上で、本記事はおわりです。

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読んでいただき、ありがとうございました(^-^)