【介護記録の目的】介護記録を書く目的を解説します【全部で11個】

介護記録

この記事はこんな悩み・疑問にお答えします

わたしの職場では、介護記録を書けって言われるから、取り合えず書いてる。
ちゃんと教わったこともないし、マニュアルすらないのに、介護記録の書き方にケチをつけられるから、書く気が失せるし、面倒くさい。
そもそも、何のために介護記録を書いてるのか、教えてほしい…。

この記事を書いた私の実績・経歴です

  • 福祉系の大学院卒で介護の実務は13年以上。
  • 介護記録の論文執筆・学会発表の経歴あり(日本国内ではじめて、介護現場の職員2800名規模の介護記録に関する郵送調査を実施)。
  • 介護記録の書き方・活かし方にフォーカスした、コンサルティング・サービスを提供中。

【介護記録の目的】何のために介護記録を書いているのか?

【介護記録の目的】何のために介護記録を書いているのか?
介護記録への理解を深めるファーストステップとして、あなたが介護記録を書く目的(なんのために介護記録を書いているのか)を整理していきましょう。

介護記録の目的を理解することで、介護記録が担っている役割や機能に気づくことができます。

【介護記録を書く目的①】”理念”としての目的

介護記録を書く目的は、大きく分けて「”理念”としての目的」と「”手段”としての目的」の二つです(図解すると下記のようなイメージです)。

介護記録を書く目的

この二つの目的について、解説していきます。

まず、「”理念”としての目的」とは、下記の二つを意味します。

  1. 個別ケアを実践すること
  2. 個別ケアの質を高めること

上記の二つは、介護現場や介護職が追求し続けなければならない、究極の目的です。

つまり、「”理念”としての目的」とは、「個別ケアを実践するため」「個別ケアの質を高めるため」に、介護記録を使っていると考えてください。

ちなみに、あなたの職場では、耳にタコができるくらい、「個別ケアを大切にしろ」「個別ケアの質を高めろ」って言われてると思います。

でも、現場では、

「言ってることは賛成。でも、フワフワした抽象的なことを言われても、現場はどうすればいいのさ?」とツッコまれます。

まったくもって同感ですし、反論は一切ありません。

「個別ケアを実践すること」「個別ケアの質を高めること」って考え方は、あくまでも「スローガン・理念・羅針盤」という考え方にすぎません。

具体的な手段を含んだ考え方ではありません。

ということは、「個別ケアを実践すること」「個別ケアの質を高めること」を具体的な”手段”に落とし込まなければなりません。

この手段に当たる部分が、次に説明する「”手段”としての目的」です。

【介護記録を書く目的②】”手段”としての目的

介護記録における「”手段”としての目的」について、説明します。

この「”手段”としての目的」とは、

「個別ケアを実践するため」「個別ケアの質を高めるため」の介護記録の使いみち

このように考えてください。

「個別ケアを実践するため」「個別ケアの質を高めるため」の介護記録の「個別ケアを実践するため」「個別ケアの質を高めるため」に担っている介護記録の機能・役割

このように、いいかえることもできます。

介護記録について書かれた論文・参考書・ネット記事で、「介護記録の目的とは~」って語られてる部分が、「”手段”としての目的」に該当します。

では、どんな「使いみち・機能・役割」が介護記録にあるのか、説明します。

【”手段”としての目的①】援助のメモ・備忘録(備忘録)

介護現場では、たくさんの利用者さんを一人でみなければなりません。

どの利用者さんが、いつトイレに行ったか、どのくらいご飯を食べたか、などメモをしないと一瞬で忘れます。

モニタリングの時期になると、前回は何を根拠に、どんな判断をくだしたか忘れちゃうこともあります。

なので、介護現場では、介護記録を「メモ・備忘録」として使うことがあります。

【”手段”としての目的②】利用者の人物像・課題・要望の把握(課題・要望の抽出)

新規の利用者さんと関わるときに、介護現場へ提供される事前情報が、実際と違うことがあるので、その利用者さんにどんなケアが必要か、集中的に情報を集めなければなりません。

本入所の利用者さんでも、長期の入院でADLが一気に下がると、対応を全面的に変更しなきゃいけなくなるので、集中的に情報を集めなければなりません。

一方で、「買い物に行きたい」「美味しいものが食べたい」といった要望を、利用者さんから受ける場合もあります。

なので、介護現場では、介護記録を利用者さんの「課題・要望を抽出・把握するツール」として使うことがあります。

【”手段”としての目的③】気づきやノウハウの共有(情報共有)

利用者さんとある程度かかわると、「あぁしたらもっと良くなるんじゃないか?」とアイディアが湧いてくることがあります。

食事がとれてない、排泄に異変があった、熱が出てるなど、普段とは異なる異変に気づく場合もあります。

ほかにも、「コップを変えたら水分摂取量が増えた」「声掛けを変えたらスムーズにトイレ誘導ができた」などの工夫をこらす場面もあります。

このような、「気づき・ノウハウ(工夫)を援助者間で共有するためのツール」として、介護記録を使うことがあります。

【”手段”としての目的④】一貫性・継続性のある援助の展開 (現状把握・評価)

ケアの一貫性とは、援助者の勝手な判断でケアが変更されないことです。

ケアの継続性とは、援助者の都合や不手際で、ケアが一方的に中断されないことです。

介護現場では、交替勤務のなかで、利用者さんをケアします。

そうなると、たまに援助者の勝手な判断でケアが変更されたり、必要な情報が介護記録に残されておらず、引き継ぎが途絶えて、ケアを中断されることがあります。

連休明けに出勤した日なんかは、利用者さんの対応の変更が休み中にあったにも関わらず、情報の確認が漏れて、変更前の対応をしてしまうことがあったりします。

このようなことが、あってはなりません。

一方で、ケアプランに沿って、利用者さんの状態をしっかりと把握し、気づきやノウハウを共有することで、これらの情報が、ケアの正しい評価を支え、一貫性・継続性のある援助をつくります。

このように、「利用者さんの現状把握・評価を支えるツール」として、介護記録が使われています。

【”手段”としての目的⑤】同職種・他職種・他機関との情報共有と役割分担(協働・連携)

ひとり暮らしをしてる軽度認知症の高齢者を支える場合に、訪問介護の事業所・訪問看護の事業所・地域包括支援センター・民生委員・自治会など、色んな人物や機関を協働・連携しなければなりません。

このような場合は、課題ごとに関わる人物を役割分担して、それぞれに必要な情報を発信・共有する必要があります。

「協働・連携を支えるためのツール」として、介護記録が使われています。

ちなみに、協働・連携が抽象的に語られることがあるので、補足して説明すると、

協働とは、

ある目的・目標を達成するために、お互いに協力し合うこと。

連携とは、

お互いの役割をはっきりさせたうえで、お互いに必要な情報を交換・共有し合うこと。

イメージとしては、「協働するために連携をする」という感じです。

【”手段”としての目的⑥】介護記録を介した援助者の教育・指導(教育・指導)

介護現場にくる新人さんは、無資格・未経験な方ほど、右も左もわかりません。

新人さんが介護記録を書くようになると、どんな情報を、どんな書き方で、介護記録に残せばいいのは、要領がつかめていません。

なので、必要な情報が介護記録に書かれていなかったり、誤った判断で対応したことが、介護記録に書かれてたりします。

介護記録を見た上司・先輩が、ミス・誤りを優しく正してあげることで、新人さんは適切な行動がとれるようになり、着実に成長していきます。

このように、「援助者を教育・指導するためのツール」として、介護記録が使われてます。

【”手段”としての目的⑦】援助に関する組織のノウハウの向上(蓄積・分析)

利用者さんと関わるなかで、うまく行くことや失敗することが、たくさん出てきます。

このような、成功事例・失敗事例を蓄積することで、あなたの職場にしかない、ケアのノウハウを創り出すことができます。

例えば、あなたの職場で報告された過去20年分の事故やヒヤリハットを、データとして蓄積して、時間帯・場所・要介護度という切り口で分析したとします。

そうすると、「就寝介助をする20時頃に、居室で転倒するケースが多い」といった傾向をつかむことができます。

ほかにも、認知症の利用者さんの対応事例を、過去15年分データとして蓄積し、分析すると、「夕方にそわそわし始める利用者さんは、その時間に10分だけお話をすると、落ち着いて過ごす場合が多い」という傾向がつかめるかも知れません。

このように、「新しいノウハウを生み出すためのデータ蓄積」として、介護記録が使われてます。

余談ですが、厚生労働省が進めている、介護業界に集約されたビックデータを活かして、ケアプランをAI化するといった取り組みは、介護記録のこのような機能を活かした未来型の事例になります。

【”手段”としての目的⑧】援助に対する利用者やその家族への理解促進(理解・同意・賛同)

利用者さんのなかには、「援助者がどんな視点で、自分のことを見ているのか、どうやって自分をサポートしてくれるのか」と不安を感じてる方もいます。

この不安は、ケアをお願いしている利用者さんの家族も同じです。

援助者側から、介護記録を積極的に開示することで、利用者さんの不安を払拭してあげることができます。

さらに、利用者さんに介護記録を開示することで、「こんな視点で自分のことを考えてくれてたのか」と、お互いの信頼関係を高めるきっかけにもなります。

このように、「利用者さんや利用者さんの家族から、ケアに対する理解・同意・賛同を得るためのツール」として、介護記録が使われてます。

ちなみに、介護記録の開示を話題に出すと、「トラブルのもとになるから、とてもじゃないけど開示なんてできない」という意見もあります。

もちろん、この意見には私も共感します。

介護記録を開示するときは、「私たちはこうやってケアをしてるので、ぜひ見てください!ドーン!!」みたいな感じ出したら、びっくりする方もいると思います。

また、語彙力に乏しい方や、文章の読解力に乏しい方もいるので、「誤解を防ぐために、いつでも質問できるように、開示をするときは付き添う」など、開示する方に応じて、工夫するのもアリだと思います。

一方で、「ちゃんと記録が書けてないから、私の事業所は金庫にしまい込んで、絶対に開示しない」というスタンスは、もったいないかなと思います。

原則として、介護記録の開示を拒むことはできないので、開示を前提にした介護記録の運用を心掛けていきましょう。

【”手段”としての目的⑨】援助に関わる法的な証拠資料(実績・証拠)

説明するまでもありませんが、実際に現場でやってることと、介護報酬で請求することが一致していないと、不正になります。

万が一にも、介護事故で訴訟が起きたら、タイムマシーンで過去には戻れないので、介護記録に書かれてる内容が審議の根拠になります。

行政指導監査の場合には、正しい書き方で必要書類が作成されてるか確認され、誤りを修正しなければ、罰則を受けることがあります(とんちんかんな指導をしてくる場合もありますが…)。

なので、「援助に関わる法的な証拠資料・実績・証明」として、介護記録が使われてます。

以上が、介護記録の「”手段”としての目的」になります。

まとめ

この記事では、「何のために介護記録を書いているのか」「何のために介護記録を使っているのか」という点について、解説をしました。

振り返ると、イメージとしては、「個別ケアを実践する」「個別ケアの質を高める」という「”理念”としての目的」を実現するために、「”手段”としての目的」がある感じです。

いいかえると、「個別ケアを実践するため、個別ケアの質を高めるために、介護現場では色んな使いみちで、介護記録を使ってる」ということです。

介護記録の使いみちを知っておくことで、「ただ介護記録を書く」のではなく、「このような活かし方があるから、介護記録をこう書く」という考え方ができるようになります。

もちろん、色んな知識や技術は必要ですが、今後のケアへ活かすことを前提に、介護記録が書けるようになります。

今後の参考にしていただけたら幸いです。


以上で、本記事はおわりです。

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読んでいただき、ありがとうございました(^-^)