ケアマネジメントの定義を紹介・解説します【代表例を7つ】
この記事はこんな悩み・疑問にお答えします
わかりやすく解説してほしい。
ケアマネジメントの「正しい定義」を教えてほしい。
この記事を書いた私の実績・経歴です
- 福祉系の大学院卒で介護の実務は13年以上。
- 介護記録の書き方・活かし方にフォーカスした、コンサルティング・サービスを提供中。
- 介護記録の論文執筆・学会発表の経歴あり(日本国内ではじめて、介護現場の職員2800名規模の介護記録に関する郵送調査を実施)。
経歴・実績の詳細はプロフィールをご覧ください。
ケアマネジメントの定義を紹介します
ケアマネジメントの定義は無数に存在するので、探し始めたらキリがありません。
「ケアマネジメントの定義は?」って聞かれたら、下記の定義が代表例になります。
ケアマネジメントの定義はたくさんある
引用文献の文字をクリックすると、大元のデータ(原典)に移動します。
インターネット資料の場合は大元のサイトに移動して、書籍はアマゾンなどの書籍サイトに移動します。
相談支援の手引き
利用者が地域社会による見守りや支援を受けながら、地域での望ましい生活の維持継続を阻害するさまざまな複合的な生活課題(ニーズ)に対して、生活の目標を明らかにし、課題解決に至る道筋と方向を明らかにして、地域社会にある資源の活用・改善・開発をとおして、総合的かつ効率的に継続して利用者のニーズに基づく課題解決を図っていくプロセスと、それを支えるシステム(厚生労働省 2005)。
【引用文献】厚生労働省(2005)『相談支援の手引き』※インターネット資料
障害者ケアガイドライン
障害者の地域における生活支援をするために、ケアマネジメントを希望する者の意向を踏まえて、福祉・保健・医療・教育・就労などの幅広いニーズと、様々な地域の社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけて調整を図るとともに、総合的かつ継続的なサービスの供給を確保し、さらには社会資源の改善及び開発を推進する援助方法である(厚生労働省 2002)。
【引用文献】厚生労働省(2002)『障害者ケアガイドライン』※インターネット資料
ケースマネジメント─ニーズとサービスを結ぶ新しい支援システム─
ケースマネジメントというのは、虚弱・障害老人など複雑なニーズをもち、かつ精神的もしくは身体的ハンディキャップのため、現代社会の高度に専門分化した各種のサービスや、民間団体、友人、隣人などの支援を、自分自身では適切に活用できない人を対象として、そのような人が、常にニーズにもっとも合致したサービスを受け、また民間団体、友人、隣人などから、可能な限り支援を受けているようにするためにい行われる、一連の援助の措置、もしくはサービスのネットワーク内で行われる相互協力活動のことを意味する(全国社会福祉協議会ケースマネージメント研究委員会 1990:10)。
【引用文献】全国社会福祉協議会ケースマネージメント研究委員会(1990)『ケースマネジメント─ニーズとサービスを結ぶ新しい支援システム─』 全国社会福祉協議会
社会福祉学事典
ケアマネジメントはコミュニティケアを推進する方法の一つとして確立され、利用者やその家族の生活全体を支援することでQOL(生活の質)を維持あるいは向上させるとともに、友好的かつ効率的にサービスを調整していくことを目的としている(日本社会福祉学会事典編集委員会 2014:210)。
【引用文献】日本社会福祉学会事典編集委員会(2014)『社会福祉学事典』丸善出版
介護福祉学事典
ケアマネジメントとは、多様な人々が地域で生活を営む上で、心身機能の障害や加齢、社会環境の問題などから何らかの生活ニーズを抱えている際に、地域に存在するさまざまな社会資源と結びつけていく相談・調整を行って、その結果として生活ニーズを軽減・解消し、地域での生活を支援していくためのシステムである。( 日本介護福祉学会事典編纂委員会 2014:242)。
【引用文献】 日本介護福祉学会事典編纂委員会(2014)『介護福祉学事典』ミネルヴァ書房
ケースマネジメントの理論と実際─生活を支える援助システム─
ケアマネジメントとは、要援護者やその家族が社会生活を送るうえで困っている生活上での問題(ニーズ)と、地域に散在しているさまざまな社会資源(サービス提供機関)とを結びつける方法・機能(白澤政和 1992:11)。
【引用文献】白澤政和(1992)『ケースマネジメントの理論と実際─生活を支える援助システム─』中央法規
ケースマネジメントの理論と実際─生活を支える援助システム─
1970年代中頃から、アメリカで使われるようになった用語。ケースマネージャー、クライエントとすでに制度となっているフォーマルなサービス、また家族、親戚、近隣、ボランティアなどのインフォーマルなサポートを結びつけ、クライエントを継続的に援助する方法の総体。(小田兼三ほか 1993:184)。
【引用文献】小田兼三・京極高宣・桑原洋子・ほか編(1993)『現代福祉学レキシコン』中央法規
以上が、ケアマネジメントの定義になります。
結局のところケアマネジメントってなに?
ここまで読んでくれた方は、もしかしたら、
でも、それぞれ言ってることが違うじゃん。
結局のところ、ケアマネジメントってなに?
って疑問に思うかも知れないので、この点を解説します。
まずは、先に書いた定義の赤字の所に注目しましょう。
定義のポイントになる部分です。
このポイントを、整理すると、下記のようなエッセンスが抜き出せます。
- 地域(特に自宅)での生活を支える
- 利用者さんのニーズを解決する
- 公的な支援(フォーマルサービス)を使ってニーズに対応する
- 家族・親戚・ボランティア(インフォーマルサービス)を使ってニーズに対応する
- 利用者さんのニーズにフォーマルサービス・インフォーマルサービスを繋ぎ合わせる
これがケアマネジメントのエッセンスになりますが、ケアマネジメントの目的と解釈してもオッケーです。
このエッセンスを踏まえて、ケアマネジメントで定義されてることを、シンプルにまとめると、下記のような感じになります。
これを図にすると、下図のようなイメージです。
まとめ─ケアマネジメントの正しい定義はない─
ここまで読んでくれた方は、もしかしたら、
でも、定義っていうからには、「これこそがケアマネジメントの定義だ!」っていうものがあるんじゃないの?
って疑問に思うかも知れないので、この点を解説します。
結論からいうと、ケアマネジメントの代表的な定義を紹介しましたが、センチメートルやキログラムといった国際基準、JIS規格のような形で、「これこそがケアマネジメントの定義です!」というものは、ありません。
それには理由があって、まずは「定義」という言葉の意味を知ることが大切です。
そもそも定義とは、コミュニケーションの一つです。
たとえば、私が「“ドラえもん”を想像してください」といったら、どんなものを想像しますか?
ドラえもんと言われて、アンパンマンやコロ助を想像する方は少ないと思います。
では、私が「“ドラえもん”を説明してください」といったら、どんな説明をしますか?
私なら、「身体が水色で、ヒゲがあって、赤い鼻で、首に鈴がついてるネコ型ロボット」って説明します。
もう一つ例を挙げます。
たとえば、私が「“鉛筆”を想像してください」といったら、どんなものを想像しますか?
たぶん、下記のものを想像すると思います。
鉛筆といわれて、シャーペン・ボールペンを想像する方は少ないと思います。
では、私が「“鉛筆”を説明してください」といったら、どんな説明をしますか?
私なら、「外側が木で作られてて、内側に黒い何かが入ってて、紙に書くと字がかけるやつ」って説明します。
ただ、この説明だと鉛筆は作れないので、細かいことがJIS規格で定められてます。
つまり、何が言いたいかって話ですが、
ドラえもんや鉛筆は、実際に形があるので、色・形状・素材などを決めてしまえば、それが何であるかを、言葉で相手と共有することができます。
いいかえれば、「それが何であるかを説明するために、色・形状・素材など細かな要件を決めること」が定義といえます。
一方で、ケアマネジメントという言葉を考えてましょう。
形がないし、ケアマネジメントに関する取り組みも色々です。
ほかにも、社会福祉・介護福祉・福祉という言葉も同じで、形がありませんし、取り組みも様々です。
ケアマネジメントのように形がないものだからこそ、説明する人によって、説明に違いが出ます。
これがケアマネジメントに正しい定義がない理由です。
極論をいってしまえば、どれも正しいし、間違ってる可能性もあります。
福祉・介護で扱うものの多くは、形がないものが多く、形に残りにくいものが多いです。
なので、ケアマネジメントなど福祉・介護の業界で使われてる言葉の定義を探すときは、
これらの機関・団体で使われてる定義を探し出して、定義のなかで語られてるエッセンスを抜き出すのが、最適解です。
学術的な研究がバックグラウンドにあるので、信頼性が高いです。
以上で、本記事はおわりです。
疑問・悩み・相談があれば、ツイッターの@kazuya_worksにDMください!
あなたの介護士ライフを心から応援しています。
読んでいただき、ありがとうございました(^-^)